大草原の小さな家 「メアリーの失敗」と母の失敗

2020年7月8日

映画 /ドラマ

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メアリーの失敗というエピソードの中に、信賞必罰という言葉が出てきます。


功績ある者は必ず賞し、罪ある者は必ず罰するという意味です。しかし、そのやり方が、本当に正しいのでしょうか?

この物語では、この考え方に疑問を投げかけています。


あらすじ
インガルス家の父、チャールズが留守の間の出来事。

今年も奨学賞を決める試験が行われます。最優秀の生徒には、豪華な辞書が与えられるというもの。


これを聞いて目を輝かせるメアリー。すぐに猛勉強を始めます。しかし、歴史の本がないため、ビードル先生から借りることにします。

メアリーは夜遅くまで勉強しますが、明かりが眩しいとローラに言われ、納屋へ行きます。本を読むうちに、つい居眠り。ランプを倒してしまい、納屋が火事になります。


母キャロラインとローラに助けを求め、なんとか全焼は免れました。しかしキャロラインは激昂。怒鳴り散らしてメアリーを叱ります。

泣きながら謝るメアリー。それでも母の怒りは収まらず、罰として奨学賞の試験は受けさせないと言い放ちます。

翌日になって冷静になるキャロライン。厳しく言い過ぎたことを後悔し、オルデン牧師に相談します。

罰は厳し過ぎではないのかと質問するのに対して、牧師はこう答えます。


「ここで罰を取り消したら、見逃してもらえると甘えてしまう。家庭教育の基本は、信賞必罰です。これが崩れると、子供は道徳観念を失ってしまう」

これを聞き、キャロラインも納得します。


信賞必罰は必要か
信賞必罰が必要かどうかは状況次第です。社会や組織ならば、それが有効な場合もあるでしょう。

しかし、メアリーの場合はどうでしょうか。火事というショック体験をしています。もしかすると、心に深い傷を残す可能性もあり得ます。

私も過去に、家で火事を起こしそうになったことがあります。消火器があったので助かりましたが、あれにはビビリました。忘れられない体験のひとつです。

メアリーはこの怖い体験を通して、すでに十分な罰を受けました。彼女は賢い女の子です。失敗を通して深く反省し、学んだことでしょう。

そのうえさらに罰を与えるのは、まったく意味がないことです。それならば、罪を償わせる目的を与えた方が、はるかに建設的です。

メアリーは、ビードル先生から借りていた本を、家事で燃やしてしまいました。そのため、自主的に働いて弁償します。

これこそ過ちを犯したメアリーにとって、正しい責任の取り方です。


アンダーマイニング効果と信賞必罰
報酬をもらうことで、やる気がなくなる現象を、アンダーマイニング効果といいます。

勉強をやったら報酬がもらえ、やらないと罰を受ける。このようにモチベーションが外から与えられる場合、自発性が失われる可能性があります。

自発性とは、内側から湧いてくるものです。好奇心や趣味などです。しかし、楽しくて行っていたことが、いつしか報酬をもらわないとやる気が出ない。

報酬が目的に変わるからです。これは罰についても同じです。罰を受けないために行動する。

逆に考えれば、罰さえ受けなければ、悪い事でもしてよいということです。それこそ本当の意味での、道徳観念が失われます。

道徳や良心もまた、内側から起こるものだからです。このような観点からも信賞必罰は、慎重に行う必要があります。


ドラマの最後
メアリーはひとり、罰のことで苦悩していました。すべてを知ったキャロラインは、メアリーに厳しくし、追い詰めていたことを深く反省します。


キャロラインもまた、メアリーに謝ります。最後はお互いを許し合い、ようやくわだかまりが解けます。

この回もやはり名作でした。特にメアリー演じる、メリッサ・スー・アンダーソンの演技力が改めてすごい。

ちなみに原題の「Award」には、賞という言葉以外にも、許すという意味もあります。

誰かが失敗をしたときに、大切なことは許すことである、そんなメッセージが暗に込められているのかもしれませんね。

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