なぜ裸で満足?『くまくんとけがわのマント』に隠された幸せの本質

2022年4月8日

『くまくんとけがわのマント』は一見すると子ども向けの物語ですが、その奥には“幸せの本質”という深いテーマが隠されています。
ここでは物語のあらすじを辿りながら、そこに隠された意味を考察します。


『くまくんとけがわのマント』のあらすじ

おお、寒い。ほら あんなに雪が降っている。こぐまのくまくんは、お母さんにいいました。

「寒いよう。あんなに雪が降っている。ボク、なにか、着るものがほしい」

そこで、母さんくまは、くまくんに、いいものをこしらえてくれました。
「ほうら、いいものが出来ましたよ。かぶってごらん」

「わあーい。帽子だ。これがあれば、もう寒くないぞ」

くまくんは外に出ていきました。
けれど、すぐに戻ってきました。

「どうしたの。まだ何か欲しいの?」と母さんくまが聞きました。

「寒いよう、ボク、なにか、着るものがほしい」

そこで母さんくまは、くまくんに、いいものをこしらえてくれました。

「ほうら、いいものが出来ましたよ。着てごらん」

「わあーい、オーバーだ、ばんざーい!もう、これで寒くないぞ」
くまくんは喜んで外へ出ていきました。けれども、またすぐに戻ってきました。

「あら、何かまだ欲しいの?」と母さんくまは聞きました。

「ボク、寒い、なにか、着るものがほしい」

そこで母さんくまは、くまくんに、もう一度、いいものをこしらえてくれました。

「ほうら、くまくん、いいものが出来ましたよ。これさえあれば、もう寒くないはずよ。さ、履いてごらん」

「わあーい、ズボンだ、ばんざーい。もう、これで寒くないぞ」

くまくんは、大喜びで外へ飛び出していきました。ところが、またまた、戻ってきました。

「おやおや、今度はなあに?」と母さんくまが聞きました。

「ボク、寒い、なにか、着るものがほしいよう」

これには、母さんくま、ブチ切れ!
「いいこと」と母さんくまは言いました。

「おまえは、帽子をかぶって、オーバーを着て、ズボンを履いているのよ。このうえ、何が欲しいの?毛皮のマントでも欲しいっていうの?」

「うん、ボク、毛皮のマントがほしい」と、くまくんは言いました。

母さんくまは、くまくんの帽子を脱がせ、オーバーを脱がせ、ズボンを脱がせました。

そして、くまくんの体を、ポンポンと叩いて、「ほうら、毛皮のマントなら、ここにありますよ」といいました。

「ばんざーい!これ、ボクの毛皮のマントだ。これでもう、寒くないぞ」

くまくんは、そう言って、元気よく外に出ていきました。そして、ほんとにもう、ちっとも寒くなかったんですって。

なんだか、おかしいですね。


『くまくんとけがわのマント』の意味と考察

『くまくんとけがわのマント』は児童文学としてだけではなく、寓話(動物を擬人化した教訓を含む物語)として読むこともできます。

この物語には、私たちが人生で探し求めている「本当の幸せ」の答えが描かれているのではないでしょうか。


私たちは多くの場合、幸せを外側に求めます。車や家、名声や富、あるいは結婚などなど。これらが手に入れば、幸福になれると信じています。

確かに一時は、満足するかもしれません。ですが、いずれ虚しさが訪れます。そしてまた、何かで心を満たそうと試みます。

しかし、根本的には満たされません。心は寒いままです。それはなぜでしょうか?

本当の幸せとは、物や出来事の中にはないからです。

外側に何かを足すことで満たされるのではなく、すでにあるものに気づくことです。

母さんくまが「ここにありますよ」と言ったもの。それは、永遠に変わることのない「本当のあなた」を象徴しています。

こうした考え方は、古くからさまざまな思想や宗教の中でも語られてきました。

しかし私たちは、つい外側ばかりを追いかけて、自分が誰なのかを忘れてしまいました。 それを思い出すまでは、どこか満たされない感覚が残ります。


心に虚しさがあるとき、それは自分の真実の声――魂からのサインなのかもしれません。


そのとき、初めて人は向きを変え、自己の探求を始めます。 


でも、難しく考える必要はありません。「探求」と聞くと、また遠くを探してしまうからです。インドに行って探してみたり。


私自身も、日々の中で立ち止まる時間を持つことで、その感覚に触れることがあります。


静かに自分に戻るような時間の中で、幼い子供のような「デフォルト状態」に心のチューニングを合わせてみる。


すると、何かを足さなくても、今ここにある無条件の幸福感に包まれることがあります。


それが、無為自然などと呼ばれるものなのかもしれません。その幸福こそが、自己の本質です。


この寓話は、外側にだけ幸せを追い求めるのはやめなさい、と伝えているのかもしれませんね。なんとも深い物語です。


今日の格言

童話、侮るべからず。子ども向けという仮面の奥に、大人が見失った真理が隠されているのです。

『くまくんとけがわのマント』の作品情報・作者紹介

『くまくんとけがわのマント』は、アメリカの児童文学『こぐまのくまくん(Little Bear)』シリーズの一編です。


  • 作品名:こぐまのくまくん (Little Bear)

  • 作者:E・H・ミナリック

  • :モーリス・センダック

  • 訳者:松岡 享子

  • 出版社:福音館書店

  • 出版年:1972年(初版発行)

  • ジャンル:児童文学・絵本

  • 対象年齢:年長〜